演奏の記号:大きさ、速さ、そして進む道
音符は、どの音を弾くかを教えてくれます。そのまわりの記号は、どう弾くかを教えてくれます。弱くか強くか、ゆっくりか速くか、短くかなめらかにか。なかには、地図の矢印のように、前にもどったり先へ跳んだりさせる記号もあります。ボタンを押してそれぞれの記号を聴き、指で地図をたどってみましょう。
このレッスンの内容

強弱:どのくらいの大きさ?
どのくらい強く、または弱く演奏するかを「強弱」といいます。おもな文字は p と f の2つです。p はピアノ(piano、弱く)、f はフォルテ(forte、強く)。前に m(メゾ、mezzo=半分)をつけると、真ん中の段になります。mp はメゾピアノ(少し弱く)、mf はメゾフォルテ(少し強く)です。文字を2つ重ねるともっと先へ進みます。pp はピアニッシモ(とても弱く)、ff はフォルティッシモ(とても強く)です。
つまり、弱いほうから強いほうへのはしごは pp、p、mp、mf、f、ff です。これは音量計の決まった数字ではありません。おたがいにくらべたものです。トランペットの p は、ギターの p よりやはり大きな音です。大切なのは、p は mf より弱く、f は mf より強いということです。
- 短い曲を弱く弾きます。
- 同じ曲を強く弾きます。
- 1つのコードがはしごをのぼります:pp、p、mp、mf、f、ff。
やってみよう:「おはよう」を p で言い、次に mf、次に f で言ってみましょう。同じことばで、3つの強弱です。
だんだん強く、だんだん弱く
音楽は、音の大きさを少しずつ変えることがよくあります。クレッシェンド(cresc.)は「だんだん強く」、デクレッシェンドまたはディミヌエンド(decresc.、dim.)は「だんだん弱く」という意味です。ことばのかわりに、音符の下に細長いくさび形を書くこともあります。日本では形から「松葉」とも呼びます。開いていくもの(のばした < のよう)は強く、閉じていくもの(のばした > のよう)は弱くです。
この長いくさび形を、1つの音符についた小さな > とまちがえないようにしましょう。小さな記号はアクセントで、このあとで聴けます。音の大きさに関するほかのイタリア語は、「音楽用語」のレッスンにあります。
- 弱く始まって、最後に向かってだんだん強くなります。
- 同じ曲が強く始まって、だんだん消えていきます。
速度:どのくらいの速さ?
曲のはじめにある速度のことばは、拍がどれくらいの速さで進むかを教えてくれます。Largo(ラルゴ)はとてもゆっくり幅広く、Andante(アンダンテ)は歩くような速さ、Moderato(モデラート)は中くらい、Allegro(アレグロ)は速く明るく、Presto(プレスト)はとても速く、です。多くの曲には ♩ = 92 のような数字も書かれています。これは1分間に92拍(BPM)という意味です。
おおよその目安は、Largo 約40〜60 BPM、Andante 約76〜108、Moderato 約108〜120、Allegro 約120〜156、Presto 約168〜200 です。本やメトロノームによって数字は少しちがい、曲ごとにもそれぞれの感じがあります。下では、同じ短いフレーズを4つの速さで弾きます。速いものは、耳がなじむように2回以上弾きます。
途中で速さを変えることばもあります。リタルダンド(rit.)は、自転車がゆっくり止まるように「だんだん遅く」、ア・テンポ(a tempo)は「もとの速さで」という意味です。全部の一覧は「音楽用語」のレッスンにあります。
- 50 BPM のフレーズ:ゆっくり幅広く。
- 同じフレーズを 92 BPM で、歩くような速さ(2回弾きます)。
- 同じフレーズを 138 BPM で:速く明るく(2回弾きます)。
- 同じフレーズを 184 BPM で:とても速く(3回弾きます)。
- 2回弾きます。2回目は、最後の小節がだんだん遅くなります。
やってみよう:メトロノームを 60、92、138 に合わせて、それぞれその場で足ぶみしてみましょう。Andante らしく感じるのはどれですか?
短く、またはなめらかに:スタッカートとレガート
音符の上か下にある小さな点はスタッカートです。音を短く、切りはなして弾き、そのあとに少しだけ静かな間をつくります。シャボン玉を1つずつ割っていくような感じです。いくつかのちがう音の上にかかる曲線はスラーです。その音はレガートで、すき間なくなめらかにつなげて弾きます。鉛筆を紙からはなさずに線をかくようなものです。
スラーはタイに似ていますが、同じではありません。タイは同じ高さの2つの音符をつないで、1つの長い音にします(「リズムと音符の長さ」のレッスンを見てください)。スラーはちがう音をつなぎ、なめらかにつなげて弾くように教えてくれます。同じ曲を両方の弾き方で聴いてみましょう。
- どの音も、すき間なく次の音へ流れていきます。
- 同じ曲を、短くはずむ音と小さな静けさで。
アクセントとフェルマータ
アクセントは、音符の上か下にある小さな > で、その音をまわりの音より強く弾くという意味です。文のなかで1つのことばだけを大きく言うようなものです。アクセントで、メロディーの感じが変わることがあります。例では、各小節の速い8つの音のうち、1、4、7番目にアクセントがつくので、3 + 3 + 2 のまとまりに聞こえます。
フェルマータ 𝄐(下に点のある曲線)は、その音(または休符)を書かれた長さよりのばすという意味です。どれくらいのばすかは、演奏者か指揮者が決めます。動画をお気に入りの場面で一時停止して、また再生するようなものです。
- 速い音を、すべて同じ強さで。
- 同じ音で、各小節の1、4、7番目にアクセント。
- 曲を拍どおりに最後まで弾きます。
- 同じ曲で、2小節目の高い音を長くのばしてから、拍がまた進みます。
反復記号と1番かっこ・2番かっこ
紙を節約するために、楽譜では同じ小節を2回印刷しません。反復記号(リピート記号)は、太い複縦線のとなりに2つの点がついたもの(𝄇)で、「もどって、この部分をもう一度弾きなさい」という意味です。対になる始まりの記号(𝄆)までもどります。始まりの記号がなければ、曲のいちばん最初にもどります。
2回目は終わり方がちがうこともあります。1. と 2. と書かれたかっこが、1番かっこと2番かっこです。1回目は1番かっこを弾いて、もどります。2回目は1番かっこをとばして、そのまま2番かっこへ進みます。例の地図は:𝄆 A の小節、B の小節、[1. 1番かっこ]𝄇[2. 2番かっこ]。だから、A、B、1番かっこ、そして A、B、2番かっこと聞こえます。
- A、B、1番かっこ(もどる)、A、B、2番かっこ(終わる)。
D.C.、D.S.、Fine、Coda:矢印をたどろう
D.C.(ダ・カーポ)は「はじめにもどる」、D.S.(ダル・セーニョ)は「記号 𝄋(セーニョ)にもどる」という意味です。どこで止まるかを教えることばがいっしょに書かれます。al Fine は Fine(フィーネ)ということばまで弾いて、そこで終わるという意味です。al Coda は「To Coda」𝄌 まで弾いたら、Coda(コーダ)へ跳ぶという意味です。Coda は同じ記号で始まる、曲の終わりの部分です。
例1、D.C. al Fine。地図は4小節です:1、2(Fine)、3、4(D.C. al Fine)。1、2、3、4 と弾いて、はじめにもどり、1 と 2 をもう一度弾いて、Fine で止まります。例2、D.S. al Coda。地図は:前奏、𝄋 2小節目、3小節目(To Coda 𝄌)、4小節目(D.S. al Coda)、そして Coda。前奏、2、3、4 と弾き、記号にもどって 2 と 3 を弾き、Coda へ跳びます。
知っておきたい習慣がひとつあります。D.C. や D.S. でもどったときは、楽譜や指揮者がほかの指示をしないかぎり、2回目は反復記号をとばして、最後の終わり方だけを弾くのがふつうです。
- 1、2、3、4小節、はじめにもどって 1 と 2、Fine で止まります。
- 前奏、2、3、4、記号にもどって 2 と 3、そして Coda へ。
やってみよう:新しい曲を弾く前に、指で道順をたどってみましょう。まず、反復記号、かっこ、𝄋、Fine、𝄌 をすべて見つけてから、再生を押して矢印をたどります。
ピアノの音:Salamander Grand Piano(Alexander Holm、CC BY 3.0)。