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クラリネット:各部の名前、音が出るしくみ、吹き方

クラリネットは1枚のリードで音を出す木管楽器で、その声はあたたかく深い音から、明るくすんだ音まで広がります。いちばん変わっているのは、キーを1つ押すと音が12度もとび上がることです。フルートのように1オクターブではありません。このページでは、いちばんよく使われる B♭管クラリネットを中心に紹介します。

2026年10月9日 内容確認

このレッスンの内容

クラリネットってどんな楽器?

クラリネットは木管楽器の仲間です。マウスピースにリードがついていて、本体は上から下までほとんど同じ太さの管、つまり円筒です。管にならぶキーとトーンホールで音の高さを変えます。

クラリネットは、じつは大きな家族です。いちばんよく使われるのは B♭管(日本ではドイツ音名で「B(ベー)管」ともいいます)で、長さは約66 cmです。オーケストラでは A管も使います。長さは約71 cmで、指づかいもマウスピースも B♭管と同じです。小さな E♭管は約49 cmで、B♭管より4度高い音が出ます。バスクラリネットは B♭管の約2倍の大きさで、1オクターブ低い音が出ます。

どれも少しずつ音がちがいます。B♭管はつやがあって明るく、豊かですんだ音。A管はやわらかく、それほど力強くありません。C管はもっと明るく、冷たく、かたい音で、今はめったに使われません。

仲間
木管楽器(シングルリード)
分類
ホルンボステル=ザックス分類 422.211.2:シングルリード、円筒管、指穴あり
実音の音域
D3 から B♭6(記譜では E3 から C7)
音部記号
ト音記号
移調
B♭管:書かれた音より長2度(全音1つ)低く鳴る
おもな大きさ
B♭管 約66 cm、A管 約71 cm

クラリネットの各部

クラリネットは、マウスピース、バレル、上管、下管、ベルの5つに分かれます。吹く前に、1つずつつないでから、リードをつけます。

本体は、アフリカン・ブラックウッド(グラナディラ)、エボナイト(硬質ゴム)、金属で作られます。今いちばん多い木はグラナディラです。ABS 樹脂というプラスチックで作ったクラリネットもあり、とてもじょうぶで、湿度の変化にも強いです。

楽器の中やうしろ側にあって、図では見えない部品もあります。その番号は、だいたいの位置を示しています。

クラリネットの各部
  1. リード reed

    ケーン(ダンチク、学名 Arundo donax)の薄い板。音のスイッチです。息を受けて、とても速く開いたり閉じたりします。

  2. リガチャー ligature

    リードをマウスピースにとめる金具。リードを正しい位置に置き、リガチャーの位置を合わせてからしめましょう。

  3. マウスピース mouthpiece

    口にくわえる、くちばしのような形の先端。エボナイト(硬質ゴム)か、ココスウッドという木で作られます。

  4. バレル barrel

    マウスピースの下の短い部品で、小さなたるのようにふくらんでいます。マウスピースと上管をつなぎます。

  5. ジョイントコルク tenon cork

    部品どうしをさしこむところに巻いてあるコルクの輪。組み立てる前にコルクグリスを少しぬりましょう。コルクはすり減るので、1〜2年ごとに交換が必要です。

  6. 上管 upper joint

    左手で押さえる部分。左手の親指で押すレジスターキーがあり、音を12度とび上がらせます。

  7. トーンホールとキー tone holes & keywork

    管には約24個のトーンホールがならんでいます。標準的なベーム式クラリネットには、キーが17個、リングが6個あります。キーは洋銀、真ちゅう、銀、金で作られます。

  8. 下管 lower joint

    右手で押さえる部分。裏側にサムレスト(指かけ)があり、右手の親指でここから楽器全体をささえます。

  9. ベル bell

    朝顔のように広がった先端。音を管の外へ出すのを助け、いちばん低い音では管の長さを足すようなはたらきもします。

音はどこから来るの?

吹くときの息の圧力は、まわりの空気よりほんの少し、約3%高いだけです。リードは、ひとりでに開いたり閉じたりする小さなとびらのようにはたらきます。息がリードをマウスピースのほうへ押して、すきまがせまくなります。リードはとても速く開いたり閉じたりするので、まっすぐな息の流れが、細かい空気のかたまりの連続に変わります。そのふるえが音です。

強く吹きすぎると、リードがぴったり閉じてしまい、空気がまったく通らなくなります。庭のホースをぎゅっとつぶすと、水が止まるのと同じです。だから、高い音が出ないのは、息が足りないからではないことがよくあります。

マウスピース側はリードでほとんどふさがれ、ベル側は開いています。だからクラリネットは「片方が閉じて、片方が開いた管」としてはたらきます。こういう管では、いちばん長い音の波は管の長さの約4倍になります。長いなわとびのなわが、大きくゆっくりした1つの輪でしか回らないのに少し似ています。そのいちばん長い波が、いちばん低い音になります。実音の D3(記譜は E3)です。

楽器の音には、もっと小さくて高い音の列がかくれています。これを倍音といいます。クラリネットの低い音では、その列の1番目、3番目、5番目(奇数番目)がとくに強く、偶数番目は弱くなっています。歯を1本おきに短く切ったくしのようです。だから低音域は、中が空っぽのような音がします。真ん中あたり(スロートの音)では偶数番目の倍音も大事になり、レジスターキーを開けるとこの差はほとんどなくなって、音が明るくすんできます。

レジスターキーを押すと、管の閉じた側から約3分の1のところにある小さな穴が開きます。すると音は3倍の周波数、つまり12度上にとびます。12度は、1オクターブと完全5度を合わせた幅です。なわとびのなわの3分の1のところを、だれかが軽くつまむと、なわが1つの大きな輪ではなく、3つの輪で回るようになるところを想像してみてください。

ベル側から順に、トーンホールを1つ開けるごとに、ふるえる部分がマウスピースに近づきます。管を約6%短く切ったようになって、音が半音上がります。

スロートの音は、管の中の共鳴がうまくそろうのが2つだけなので、音程がずれやすく、音も少し弱く、こもって聞こえます。「ラプソディ・イン・ブルー」の冒頭の有名なのぼっていくグリッサンドでは、最後の1オクターブ(記譜 C5 から C6、実音 B♭4 から B♭5)で、上手な奏者は口の中の共鳴を管の共鳴と同じくらい、またはそれ以上に強くなるよう調節します。口笛を吹くとき、口の形を変えて音の高さを変えるのに少し似ています。

やってみよう:下の「聴いてみよう」で、B♭3 を鳴らしてから F5 を鳴らします。クラリネットでは、この2つは同じ指づかいで、ちがうのはレジスターキーだけです。では、鍵盤で B♭3 から上へ数えてみましょう。F5 は1オクターブ上(それは B♭4)ではなく、さらにその上の F まで行きます。これが12度です。

吹き方

肩の力をぬき、指はやさしく丸めます。クラリネットをささえるのは右手の親指だけです。サムレストの下に、自然な C の字の形で当てましょう。親指を反らせたままにしてはいけません。顔はまっすぐ前に向け、ほほをふくらませないようにします。楽器と体の角度で音色が変わります。角度を小さくすると音がまとまりますが、下くちびるを強く押しつけすぎることがあります。

いちばん一般的な口の形は、シングルリップ・アンブシュアです。下くちびるで下の歯をやさしくおおい、上の歯はマウスピースにしっかりのせます。マウスピースは、ストローを使うときのように、ちょうどよい深さでくわえましょう。浅すぎると音が出にくく、深すぎると音がくずれます。ダブルリップ・アンブシュアを使う人もいます。下くちびるで下の歯を、上くちびるで上の歯をおおう吹き方です。ダブルリップで始めて、安定してからシングルリップに切りかえる先生もいます。

指でトーンホールやリングキーをふさいだり開けたりして、管の長さを変えます。左手の親指でレジスターキーを押すと、同じ指づかいで12度高い音が出ます。記譜の C4 が記譜の G5 になります(実音では B♭3 が F5 に)。いちばん高い音では、左手人さし指の穴も、レジスターの穴として使います。

音を曲げる(ベンドする)ときは、あごを下げるのではなく、舌の位置を変えます(舌の真ん中がリードに近いほど、音は低くなります)。クラリネットの音は下にしか曲げられません。低音域では約4分の1音、中音域では半音くらいまでです。高い音でかみしめてはいけません。リードを押しつぶして閉じてしまいます。かわりに、右手の親指でクラリネットを押し上げ、あごを下に向けるようにすすめる先生がいます。

ほかにも、いろいろな奏法があります。レガートは舌を使わず指だけで音をつなぐ奏法で、3度から6度のスラーでの跳躍は、いかにもクラリネットらしい書き方です。トリルやトレモロは2つの音をすばやく入れかえ、グリッサンドは穴を半分ふさいだり指づかいを変えたりしてすべらせます。フラッタータンギングは吹きながら R を巻き舌にし、重音(マルチフォニックス)は特別な指づかいで2つ以上の音を同時に鳴らします。ダブルタンギングやトリプルタンギングは、リードが舌のじゃまになるので、めったに使われません。

  • 舌の先でリードの先に軽くふれます。「タ」ではなく「ダ」というようにすると、1つ1つの音がはっきり始まります。ここでは実音 F4(記譜 G4)の短いタンギングです。
  • 同じ指づかいで、レジスターキーなし、次にありで吹きます。実音 B♭3(記譜 C4)、次に F5(記譜 G5)。
  • すべての穴をふさぐと管全体が鳴り、いちばん低い音、実音 D3(記譜 E3)が出ます。

音域と楽譜

クラリネットの楽譜は、ト音記号で書きます。B♭管クラリネットは移調楽器です。聞こえる音は、書かれた音より全音1つ(長2度)低くなります。だから、記譜の C4 は B♭3 として、記譜の D4 は C4 として鳴ります。

B♭管クラリネットは、記譜で E3 から C7、実音で D3 から B♭6 です。オーケストラでは、ふつう実音 G6 より上は使いません。家族のほかの楽器は移調のしかたがちがいます。A管は書かれた音より短3度低く、E♭管は短3度高く鳴ります。バスクラリネットは、ト音記号で書くと長9度低く、ヘ音記号で書くと長2度低く鳴り、実音 B♭1 まで下がれます。

音域は、音色のちがういくつかの音域に分かれます(実音で表し、かっこ内は記譜)。低いシャリュモー音域 D3–E4(E3–F♯4)は暗く、豊かで、やわらかく、あたたかい音。スロート音域 F4–A♭4(G4–B♭4)は少し弱く、こもった音。クラリオン音域 A4–F6(B4–G6)は明るく、つやがあり、まとまった音。いちばん上の G♯6–B♭6(A♯6–C7)は、かん高く、つきさすような音です。

記譜
実音
B♭管クラリネット:記譜の C4 と D4 は B♭3 と C4 で鳴り、全音1つ低くなります。
D3 – B♭6

聴いてみよう

  • 暗く、中が空っぽのような低い音。低音域では、奇数番目の倍音がとくに強いのです。
  • 実音 B♭3(記譜 C4)、次に F5(記譜 G5)。同じ指づかいにレジスターキーを加えただけです。音が12度とび上がり、音色も明るくなります。
  • スロート音域で、短くタンギングした音。軽くて、少しこもった音を聴いてみましょう。
  • クラリオン音域の音。明るく、つやがあり、まとまっています。

歴史と仲間

クラリネットは、シャリュモーという楽器から生まれました。シャリュモーはシングルリードの楽器で、ふつう指穴が8つあり、音域は約1オクターブしかありませんでした。ほとんど低い音しか出せなかったのです。

1700年ごろ、18世紀のはじめに、ニュルンベルクのデンナー家がシャリュモーにキーを2つ加えました。この功績はふつう父親のヨハン・クリストフ・デンナー(1655〜1707年)のものとされ、彼が一般にクラリネットの発明者と考えられています。クラリネットという名前は「小さなトランペット」という意味で、明るい高音からついたのかもしれません。2つキーのクラリネットは、1770年ごろまで使われました。

クラリネットは、18世紀後半のウィーン古典派の時代に、木管楽器の中でいちばん最後にオーケストラに加わりました。1791年、モーツァルトはクラリネット奏者アントン・シュタードラーのために「クラリネット協奏曲 イ長調 K. 622」を書きました。10月7日に書き上げ、10月16日にプラハで初演されました。この曲は、半音4つ分低い音まで出せるバセット・クラリネットのために書かれました。自筆譜はなくなっていて、残っている版は、ふつうの A管クラリネットで吹けるように独奏パートを書きかえています。

1812年、イワン・ミュラーが13キーのクラリネットを発表しました。これは現代のクラリネットのキーのしくみすべてにとって大きな一歩で、サムレストも彼のあとで標準になりました。

1840年代のはじめ、パリのクラリネット奏者イアサント・クローゼと楽器製作者ルイ=オーギュスト・ビュッフェは、テオバルト・ベームがフルートのために発明したリングキーを取り入れ、1844年に自分たちのクラリネットの特許をとりました。ベームのアイデアを使ったのでベーム式と呼ばれますが、ベーム自身が設計したわけではありません。今、世界でいちばん広く使われているのはベーム式です。ドイツ語圏の国々では、オスカー・エーラーが1900年に開発した22キーのエーラー式が使われています。

1838年、アドルフ・サックスは、大きなキーとまっすぐな本体をもつバスクラリネットを作りました。今使われているのと同じ形です。「ラプソディ・イン・ブルー」は、1924年2月12日にニューヨークで初演されました。冒頭はもともと速い音階として書かれていましたが、クラリネット奏者ロス・ゴーマンがリハーサルで冗談半分に長いグリッサンドで吹いたところ、ガーシュウィンが気に入り、そのまま残りました。

  1. 1700年ごろ
    ニュルンベルクのデンナー家が、シャリュモーにキーを2つ加える
  2. 1791
    モーツァルトが、アントン・シュタードラーのためにクラリネット協奏曲 K. 622 を完成
  3. 1812
    イワン・ミュラーの13キーのクラリネット
  4. 1838
    アドルフ・サックスの、まっすぐなバスクラリネット
  5. 1844
    クローゼとビュッフェが、ベーム式クラリネットの特許をとる
  6. 1900
    オスカー・エーラーの22キーのドイツ式クラリネット
  7. 1924
    「ラプソディ・イン・ブルー」が、クラリネットのグリッサンドで始まる

はじめ方とお手入れ

いちばんよく使われるのは B♭管クラリネットです。ソロでも、オーケストラでも、吹奏楽でも使います。プラスチック(ABS 樹脂)のクラリネットはとてもじょうぶで、湿度の変化も気にしません。木のクラリネットは、温度や湿度が急に変わると割れることがあります。手がまだ小さく、力も十分でないなら、ささえの道具を使って B♭管を吹くよりも、小さな E♭管でしばらく長めに練習してもよい、とすすめる先生もいます。

リードには硬さを表す番号があり、ほとんどの生徒は2.5から始めます。選ぶときは、ぜんぶぬらしてから1枚ずつ試し、あまり力を入れなくても楽に鳴るものを選びましょう。はじめのうちは、吹ける人にいちばんよいものと悪いものを選んでもらい、自分でも吹いてちがいを感じてみましょう。高い G より上で音が出ず、息の音さえ聞こえないときは、リードが完全に閉じてしまっています。息をふやしても直りません。0.5番かたいリードを試しましょう。息の音が聞こえるなら、たぶんマウスピースのくわえ方が浅すぎます。

木のクラリネットは、冬にいちばん気をつけなければなりません。冷えたクラリネットに急に約36〜37°C の息を入れると、内側はあたたまっても外側は冷たいままなので、割れることがあります。冷たいコップに熱いお湯を注ぐと割れることがあるのと同じです。いちばん割れやすいのは、マウスピースに近い上管です。吹く前に、コートの中に入れたり体にくっつけたりして、室温近くまであたためましょう。ときどきひびがないか調べ、ひびを見つけたらすぐに修理に出しましょう。ひびは少しずつ広がるからです。

  • 組み立てる前に、ジョイントコルクにコルクグリスを少しぬりましょう。ケースにしまう前には、ほこりがつかないよう、よけいな分をふきとります。
  • 吹き終わったら、リードをマウスピースから外し、マウスピースをかわかしてからしまいましょう。
  • きれいなスワブを、ベルから上へ向かってやさしく通して水分をとります。引っかかったら、ゆっくり引きましょう。ぐいっと引っぱってはいけません。
  • つなぎ目には水がたまりやすく、割れの原因になることがあるので、布でふきとりましょう。
  • キーを押さないように気をつけながら外側をふいて、汗のあとをとりましょう。直射日光、暑い車の中、暖房のそばには置かないでください。
  • 新しい木のクラリネットは、最初の2週間、1回に20〜30分以上続けて吹かないようにしましょう。

ピアノの音:Salamander Grand Piano(Alexander Holm、CC BY 3.0)。

楽器

  1. 楽器の仲間分け
  2. 弦楽器
  3. 木管楽器
  4. 金管楽器
  5. 打楽器
  6. 鍵盤楽器
  7. 声
  8. オーケストラ
  9. ピアノ
  10. アコースティックギター
  11. エレキギター
  12. エレキベース
  13. ウクレレ
  14. バイオリン
  15. チェロ
  16. フルート
  17. クラリネット
  18. サクソフォン
  19. トランペット
  20. ドラムセット

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