スペインの音楽:お城の歌からフラメンコのギターまで
スペインはギターで有名ですが、その音楽はもっとずっと広いものです。王様の宮廷の古い歌、村のバグパイプ、踊りのリズム、世界中で愛されるポップスターがいます。
このレッスンの内容

スペインの音楽はどんな音?
ひとりがギターをはやくかきならし、もうひとりが力強いビートで手をたたき、踊り手が床をふみならすところを思いうかべてみましょう。それがフラメンコです。南のアンダルシア地方から生まれた、音楽と踊りの芸術です。カンテ(歌)、トケ(ギターの演奏)、バイレ(踊り)の3つでできています。「パルマ」とよばれる手拍子とカスタネットが、リズムをさらに豊かにします。
スペインには、地方ごとの音があります。北西のガリシアでは、ガイタ(バグパイプの一種)が太鼓といっしょに演奏されます。北東のカタルーニャでは、コブラというバンドが、輪になっておどるサルダーナという踊りのために演奏します。
ずっと昔、カスティーリャのアルフォンソ10世は、1200年代に聖母マリアをたたえる400曲以上の歌を書きとめた大きな本を作らせました。『聖母マリアのカンティガ』といいます。1500年代には、作曲家トマス・ルイス・デ・ビクトリアが、歌い手のための落ち着いた教会音楽を書きました。のちには、歌とせりふのあるスペイン風のお芝居、サルスエラが人気になりました。
1800年代から1900年代には、アルベニス、グラナドス、ファリャといった作曲家が、スペインの舞曲の旋律をピアノ曲やオーケストラの曲に取り入れました。今のスペインのポップスは、フラメンコ、ラテンのリズム、電子的なビートをまぜています。

ひとつの曲のお話
1940年、バルセロナで、あるギター協奏曲がはじめて人々の前で演奏されました。ホアキン・ロドリーゴが1939年に書いて、アランフェスの宮殿と庭園にちなんで名前をつけました。いちばん愛されているのは、ゆっくりした中間の部分です。イングリッシュホルンが静かな旋律を歌い、その下でギターがやさしく弾きます。
1960年、ジャズのトランペット奏者マイルス・デイヴィスと編曲家のギル・エヴァンスは、そのゆっくりした旋律を自分たちの形にして、アルバム『スケッチ・オブ・スペイン』に入れました。このおかげで、もっと多くの人がこの旋律を聴くようになりました。
今度はカタルーニャを思いうかべましょう。週末やお祭りには、人々が広場で手をつないで輪になり、サルダーナをおどります。コブラとよばれる11人のバンドが演奏します。奏者のひとりは、片手で小さな笛を吹き、もう片方の手で小さな太鼓をたたきます。
聴けるかもしれない楽器
調べて、聴いてみられる楽器を紹介します。
- クラシックギター
- ナイロンの弦が6本あり、指ではじいてひくギターです。今の形には、1800年代のギター製作者アントニオ・デ・トーレスが大きな影響をあたえました。
- フラメンコギター
- クラシックギターより少し軽く、明るい音で、表面にプラスチックの板がはってあり、奏者が木の部分を太鼓のようにたたけます。
- ビウエラ
- ギターの形をした撥弦楽器で、6組の複弦があり、1500年代のスペインで人気でした。
- カスタネット
- ひもでつながれた2つの小さな殻で、手に持って打ち合わせてカチカチ鳴らします。名前はスペイン語の「栗」からきています。
- カホン
- 奏者がすわって手でたたく木の箱です。ペルーで生まれ、1900年代の後半にフラメンコに取り入れられました。それはパコ・デ・ルシアの功績だとよくいわれます。
- ガイタ
- ガリシアのバグパイプです。奏者が袋に空気を入れて押すと、低いドローン(持続低音)も含めて、管が鳴りつづけます。
- テノーラ
- カタルーニャの、リードを使う大きな音の木管楽器で、コブラのバンドでサルダーナの踊りの旋律を演奏します。
どう聴く?
スペインの音楽では、リズムが聞こえやすいことがよくあります。手拍子、カチッという音、足ぶみ、太鼓が、みんなをそろえてくれます。だれがビートを刻んでいるか、さがしてみましょう。
- 12拍のくり返しを聴こう
- フラメンコの多くのスタイルでは、コンパスとよばれる12拍のリズムのパターンをくり返し、手拍子とギターがそれをぐるぐると続けます。
- ドローンを聴こう
- ガリシアのガイタは、1本の管で旋律を吹き、そのあいだ低いドローン(持続低音)の管がずっと下で鳴りつづけます。
- 3拍のゆれを聴こう
- ホタはたいてい3つで数えて、カスタネットがいっしょにカチカチ鳴ることがよくあります。
Sowlea のメトロノームをゆっくりのテンポにして、1-2-3、1-2-3と数えましょう。1で大きく、2と3で小さく手をたたきます。まる1分間、続けられるかな?
スペインの音楽の物語の大きなできごと
- 1200年代マリアのための歌
アルフォンソ10世の宮廷で、音楽家たちが『聖母マリアのカンティガ』をつくりました。ガリシア・ポルトガル語で書かれた420曲です。
- 1536年ビウエラの本
ルイス・デ・ミランが、ビウエラのための曲集としては知られているかぎり最初のものを印刷しました。『エル・マエストロ』といいます。
- 1657年サルスエラの誕生
せりふの場面、歌、踊りのある舞台『アポロの月桂樹』が、ふつうサルスエラのはじまりとされています。
- 1700年代後半フラメンコのかたちができる
アンダルシアで、歌、ギター、踊りがひとつになり、今フラメンコとよばれる芸術になりました。
- 1850年代ギターの新しい形
アントニオ・デ・トーレスが、胴が大きく、内側の力木の組み方が新しいギターをつくりました。今のクラシックギターに近いものです。
- 1905〜1908年ピアノのための『イベリア』
イサーク・アルベニスが、スペインのリズムがいっぱいの12曲のピアノ曲『イベリア』を書きました。
- 1940年『アランフエス協奏曲』
ホアキン・ロドリーゴのギター協奏曲が、11月9日にバルセロナではじめて演奏されました。
- 2018年フラメンコとポップスの出会い
ロサリアが『エル・マル・ケレール』を発表しました。フラメンコと、ポップスや電子音をまぜたアルバムです。
調べてみたい名前
これらはほんの例で、ランキングではありません。おうちの人に聞いたり、検索したりして聴いてみましょう。
- トマス・ルイス・デ・ビクトリア
- イサーク・アルベニス
- マヌエル・デ・ファリャ
- アンドレス・セゴビア
- パコ・デ・ルシア
- カマロン・デ・ラ・イスラ
- カルメン・リナーレス
- モンセラート・カバリエ
- アレハンドロ・サンス
- ロサリア
そのころ、世界では
スペインの音楽が育っていたころ、ほかの場所ではこんなことが起きていました。
- 1271年マルコ・ポーロの出発
ヴェネツィアの若者が、アジアへの長い旅をはじめました。『カンティガ』がまとめられていたころのことです。
- 1564年シェイクスピアの誕生
イギリスの作家が、ストラトフォード・アポン・エイヴォンで生まれました。作曲家トマス・ルイス・デ・ビクトリアがまだ生きていたころです。
- 1756年モーツァルトの誕生
作曲家が1月27日にザルツブルクで生まれました。アンダルシアでフラメンコのかたちができつつあったころです。
- 1851年ロンドン万国博覧会
発明品を集めた大きな博覧会が、ロンドンのクリスタル・パレスで開かれました。トーレスの新しいギターの年代です。
- 1905年アインシュタインの奇跡の年
アルバート・アインシュタインが、有名な科学の論文を4本発表しました。アルベニスが『イベリア』を書きはじめたのと同じ年です。
- 1969年はじめての月面着陸
アポロ11号が7月20日に月に着陸しました。
ピアノの音:Salamander Grand Piano(Alexander Holm、CC BY 3.0)。